卵はその栄養価の高さと多用途性から、日常の食事に不可欠な食材です。お菓子作りやパン作りにも頻繁に使われるため、多くの家庭で常備されています。
しかし、保存食としての利点がある一方で、賞味期限を見落としてしまうことも少なくありません。
賞味期限が過ぎた卵を使う際のリスクは本当にあるのでしょうか?
この記事では、卵の賞味期限の設定方法、期限が切れた卵の使用における注意事項、そして卵を適切に保存する方法について説明します。
卵の賞味期限の設定基準について解説します。どのようにして決定されるのか?
スーパーマーケットで販売されているパック詰めの卵には、食品衛生法に基づいた賞味期限が記載されています。
では、この卵の賞味期限はどのような基準で設定されているのでしょうか?
卵の賞味期限は「生で食べることができる期間」を指す
卵の賞味期限は、生で安全に食べられる期間を示しています。この期限はサルモネラ菌が増殖しない期間を基準に設定されます。
最初のうちは、卵内の殺菌酵素が活発に働き、菌の増殖を防ぎます。しかし、時間が経過するにつれて卵の鮮度が低下し、これらの酵素の効果も弱まります。結果として、菌の増殖が促進されることになります。
そのため、賞味期限はサルモネラ菌が増殖し始める前の、安全に消費できる期間を見込んで余裕を持って設定されています。
夏季は期間が短く、生食向けの卵の賞味期限も季節によって変動します。その理由を解説します
サルモネラ菌の増殖は、卵の保管温度に大きく依存します。この菌は温度が20〜40℃の範囲で特に活発になるため、気温が高い夏期には増殖しやすく、卵の生食適用期限が短くなります。
季節によって生食可能な日数が異なり、以下のように計算されます:
- 夏期(7月〜9月): 産卵から16日以内
- 春季(4月〜6月)および秋季(10月〜11月): 産卵から25日以内
- 冬期(12月〜3月): 産卵から57日以内
これらの情報は日本卵業協会からのものです。
一般的に、卵の賞味期限は採卵から2~3週間とされています
パッケージに記載された賞味期限は、安全を優先して「生食可能な日数」よりも短めに設定されています。一般的に賞味期限は採卵から2~3週間です。
この期間は、特に夏の短い保存期間に合わせて決められることが多いですが、冬場には実際の賞味期限を超えて卵が持つこともあります。
賞味期限を過ぎた卵は食べられるのでしょうか?
賞味期限が切れた卵が必ずしも食べられなくなるわけではありません。賞味期限は生食するための期間を示しており、十分に加熱すれば食べることができます。
ただし、卵は10℃以下で冷蔵保存することが推奨されます。また、卵の殻にひびが入っている場合は、たとえ賞味期限内であっても早めに加熱調理に使用することが望ましいです。
この情報は日本養鶏協会の「にわとりとたまごの質問コーナー」から引用しており、ここで賞味期限切れの卵を安全に食べるためのポイントを詳しく説明します。
賞味期限切れでも加熱すれば食べることが可能です
賞味期限が切れても、10℃以下で適切に冷蔵された卵は一定期間加熱して食べることが可能です。
卵の状態や正しい保存方法により、その期間は延びることがありますが、鮮度と安全性を最優先に考える場合は、賞味期限内に消費することが望ましいです。
賞味期限を過ぎた場合は、できるだけ早く使い切ることをお勧めします。
十分に加熱してから食べてください
賞味期限を過ぎた卵は、なるべく速やかに十分加熱してから摂取することが重要です。
サルモネラ菌が存在する場合でも、中心温度を70℃に保ち1分以上加熱することで菌を無効化することが可能です。
生の卵、半熟卵、温泉卵の摂取は避けてください。
賞味期限が切れた卵を生で食べるのは避けてください。これは、サルモネラ菌による食中毒のリスクが存在するためです。また、火を通しても中が流動的な半熟卵や温泉卵も同様に避けるべきです。
茹で卵は黄身が完全に固まるまでしっかり加熱することが必要です。
ヒビが入った卵への対応
ヒビが入った卵は特に注意が必要です。
卵の殻が損傷し中身が外部と接触すると、雑菌の増殖が促進されます。ヒビがある場合は、たとえ賞味期限内であっても生での消費は避け、加熱して食べることを推奨します。
ただし、ヒビが入った卵は、1〜2日以内に加熱調理して消費するのが最も安全です。分からない場合や、その日のうちに食べられない場合は使用を控えましょう。
見た目と匂いで判断する
卵を使用する際は、その外見と匂いで鮮度を判断することが重要です。
腐敗が進んだ卵は黒く変色し、特有の悪臭を放ちます。また、卵を割った時に卵黄が崩れたり、卵白と混ざってしまう場合は、劣化が進んでいる証拠です。
これらの兆候が見られたら、その卵の使用は避けるべきです。
賞味期限が不明な場合の対処法
パッケージや賞味期限の記載がない場合、卵の鮮度を判断するのは難しいです。
しかし、卵の平均的な賞味期限は採卵後2~3週間です。購入日が分かっていれば、そこから17日を目安に消費するのが一般的です。
購入日を基にしておおよその賞味期限を推定し、適切な期間内に消費することが望ましいです。
卵の保存方法
卵は10℃以下の冷蔵で保存することが前提です。
家庭での保存は、購入後すぐに冷蔵庫で行い、パックのまま保管することが推奨されます。特に冷蔵庫のドアポケットは温度変動が大きいため、卵を保管するには適していません。
冷蔵庫の中で最も温度が安定している部分、例えば奥の棚に保管するのが理想的です。
卵を下向きに保存する理由
卵を保存する際には、尖った側を下にして置くことが推奨されています。
これは、尖った部分が衝撃に強く、また卵の中の空気室が上に来ることで内容物が安定し、鮮度が保たれやすくなるからです。
市販の卵パックはこの考えに基づいて設計されているため、そのままの向きで保存しましょう。
家庭で卵を洗うべきか?
家庭で卵を洗うことは一般的に推奨されていません。
多くの場合、卵は出荷前に洗浄され消毒されています。殻の微小な穴から水が侵入し、内部に雑菌を招くリスクがあるためです。
汚れが目立つ場合は、拭き取るか、どうしても必要な場合に限り、調理直前に洗うことが適切です。
調理後の卵の取り扱い
調理後の卵、特に茹で卵は、殻がついた状態であれば冷蔵保存で2~3日持ちますが、殻を剥いた場合は1日以内に消費することが安全です。
茹で卵は完全に固茹でにし、煮卵や味玉としてさらに保存期間を延ばす方法もあります。
味玉は冷蔵保存で4~5日持ちますが、常温での保存は避け、冷蔵庫で保管しましょう。
調理済み卵の賞味期限と保存法
調理済みの卵、特に溶き卵や茹で卵は、正しく保存すれば特定の期間持続します。
茹で卵の場合、殻付きであれば冷蔵保存することで2~3日の間新鮮さを保つことができます。殻を剥いた後は、半日から1日が消費の目安です。
溶き卵は作ったその日に使い切ることが望ましいですが、保存する場合は冷蔵庫で密封し、1~2日以内に使用することが重要です。
煮卵で長持ちさせる方法
茹で卵は保存期間が短いですが、煮卵(味玉)にすることで保存期間を延ばすことができます。
煮卵は、固茹でにした後の卵を醤油、みりん、砂糖、酒を含む調味液に浸すことで味が染み込み、冷蔵保存で4~5日持つようになります。
めんつゆで簡単に味付けすることも可能ですが、常温保存は避け、しっかりと冷蔵することが重要です。
まとめ
卵は栄養が豊富で、多くの料理に使える便利な食材です。
賞味期限内に食べるのが最適ですが、賞味期限が過ぎた後でも正しく保存し、適切に調理すれば安全に食べることが可能です。
保存方法や調理技術を工夫することで、卵の美味しさと栄養を最大限に活用し、無駄なく消費することができます。